夢、現実、霧の中。
ノイズの乗ったラジオの音みたいだ。
そんな風に思った。
僕は寝ている。寝ているのだと思う。
そして、おそらくは夢なのだろうと思う。
最初の声が聞こえ、そのあとにも言葉は続き、
その音は僕の耳に確かに聞こえている。
聞こえているはずだ。
ただ、言葉が認識できない。
なんといっているのかわからない。
これはとても大切な言葉で、
どうしてもきっと聞かなければいけないし、
聞くべきなのだろうと思う。
話している人の本当の言葉なのだと思う。
でも、肝心な声が、
認識できなかった。
どうしてこんな光景が見えるのかな?
そこには僕が寝ているし、となりでは君が話している。
そして僕がそれをうえのほうから見下ろしている。
そんな光景を、霧のなかを進む電車のなか、
白昼夢みたいに、たしかに見て、声を聞いた。
はっ、前々からおかしいとおもっていたが、
どうやら、とうとうおかしくなったらしい。
僕の能力は、中途半端なものだけみせて、
肝心なところで、ちっとも役に立たない。
しかも、夢か現実か、それすらもわからない。
つまり、なにもわかっていないってことだ。
それにしても、
自分が幸せを願うひとの、言葉の破壊力は格別だ。
車酔いにちかい、衝撃を感じる。
こりゃ、ヘビー級パンチより効くね。
その言葉も、ただの夢かもしれないし、
ひょっとして寝言かもしれない。
でも、たぶん現実に君はいったのだと思う。
なんとなくそう思う。
かろうじて聞こえた最初の一声は、
「臆病者。」
うん、そんなこと。
いわれなくてもわかってる。
なんで今頃見せるかな?